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助け合う力

松井 真理子教授
 
  昨年の東日本大震災以降、「絆」が大ブームである。本年1月に内閣府が行った「社会意識に関する世論調査」によると、「震災後に強く意識するようになったこと」として、「家族や親戚とのつながりを大切に思う」が1位で67.2%となっており、「地域でのつながりを大切に思う」が59.6%、「社会全体で助け合うことが重要だと思う」が46.6%で、それぞれ2位と3位となっている。家族の大切さを再認識するだけではなく、近隣地域の助け合い、日本中、世界中から寄せられる支援や励まし、あるいは戦時中のような節電に国民が一丸となって協力する中で、「人は助け合って生きていくものだ」という、より大きな気づきが一人一人の中にあったといえるだろう。
  これまで、地域では、自分さえよければいいという人が増えているとされ、「行き過ぎた人権教育」とまで言われてきた。2009年に実施された四日市市民人権意識調査によると、「権利ばかり主張してがまんすることができない者が増えている」という考え方に共感する人は、実に8割近くにのぼっている。ゴミ当番や人間関係のわずらわしさがいやだから自治会には入らないが、自治会が管理しているゴミ置き場にゴミは出す、そんな人が確かに目につく。
  しかし、今回の大震災で私たちは、「日本人は未曽有の国難を、助け合うことによって乗り越えることができる国民」であることを学んだ。3・11の夜、東京の駅に足止めをくった大量の帰宅難民者が、駅の階段の両脇に座って眠り、まん中を通行する人のためにあけていたということを、中国ではインターネットで絶賛されたそうだ。私たちは、決して利己主義な人間ではなく、いざとなったら困っている人に手を差し伸べ、助け合って生きる力を持っているのである。
  私は、市民活動の研究を専門にしているが、今の日本のNPO活動は、一銭にもならないどころか、やればやるほど赤字(持ち出し)になるという問題を抱えている。それにもかかわらず、一人暮らしの高齢者や障害を抱えて行き場がない人のために、不登校やひきこもりの子どもたちのために、貧困やDVに苦しんでいる人のために、何と多くの人が活動していることだろう。朝から夜遅くまで、晴れがましい場に出ることもなく、おそらく表彰されることもないだろうが、ただ社会の矛盾に苦しんでいる人を見過ごすことができずに、自分の身を捧げている人々がたくさんいるのである。
  今年度から、私の「NPO論」の授業では、地道に社会貢献活動をしているNPOの方々を招いて、話を聞く時間をもうけた。若い学生たちも、生まれもって助け合う力を持っている。このような人々の言葉を生で聞くことによって、学生たちが受ける刺激は大きいと感じている。



NPO法人障害者支援グループ・ピラミッドの皆さんによる、
知的障害のある方々の手話コーラス(平成24年度「NPO論」(6月15日))
 

 


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