倫理学入門
・ 値段は私が購入または調査した時点のもので、最新のものではありません。
・ 同じ本が、単行本から文庫本になったり、他社から出版されたりしている場合があります。
1.応用倫理学とは?
2.明文化したルール、ガイドラインのつくり方
3.応用倫理学全般
4.応用倫理学(その他)
5.(伝統的な)倫理学
※ 応用倫理学に含まれる、
「生命倫理」「環境倫理」「技術者倫理」等々に関心をお持ちの方は、
それぞれのページを用意してあります。
そちらをご覧下さい。
「倫理」という言葉はよく聞かれるようになりました。
(しばしば政治の世界から聞こえてくるという状況は、
あまり望ましいものではありませんが。)
しかし倫理学については、他の分野のような「やさしい入門書」が
まだまだ少ないように思います。
そもそも倫理関係の本自体が少なく、
大きい本屋でも探すのに苦労するほどです。
(しばしば「倫理」と「論理」の本が混ざっています。)
そのため、「本を読むのが苦手な人でもすらすら読める」という本は、
かなり少ないのが現実です。
その点を、前もって頭に入れておいてください。
1.応用倫理学とは?
以下では、主に応用倫理学の本を中心に紹介します。
では、そもそも応用倫理学とは何でしょう?
「生命倫理とか、環境倫理とか、情報倫理とか‥‥」
という言い方で、だいたいイメージがつかめるかと思います。
倫理学は「善」を扱う学問だと言われています。
伝統的には「善とは何か」という議論が中心にありました。
それに対し、臓器移植とか、原子力発電所建設とか、
社会で新たに発生する具体的な問題について、
善悪を判断したり、その基準を作ったりする分野が、
応用倫理学と呼ばれています。
前者が「抽象化」の方向を目指しているのに対し、
後者は「具体化」の方向を目指しているというと、わかりやすいでしょう。
(必ずしもそうとは言えませんが、対比すればそういう傾向があります。)
倫理学の分け方はいろいろありますが、その一つの分け方です。
倫理学に初めて触れる場合、
身近な問題が扱われている応用倫理学から入るのが無難だといえます。
なお、この分野は加藤尚武氏の独壇場といえます。
2.明文化したルール、ガイドラインのつくり方
加藤尚武『応用倫理学入門』晃洋書房、2200円
倫理学とは、言い換えればルール作りの学問です。
とはいえ、具体的にルール作り、ガイドライン作りの方法を示した本は、
ほとんどありません。
その意味でも、非常にありがたい本だといえます。
生命倫理学、環境倫理、企業倫理、情報倫理の四分野について、
具体例をあげながら、合意形成の方法について論じています。
「1ガイドラインの作り方」「2生命倫理学」「3環境倫理学」
「4企業倫理学」「5情報倫理学」「6発表文の作成のしかた」からなります。
3.応用倫理学全般
加藤尚武・松山寿一編『現代世界と倫理』晃洋書房、2850円
応用倫理学の諸分野を、分野ごとに概説したものです。
「1科学と倫理」「2技術と倫理」「3医療と倫理」「4環境と倫理」
「5情報と倫理」「6経済と倫理」「7法と倫理」「8政治と倫理」
「9宗教と倫理」からなります。
続いて、加藤尚武氏の人気シリーズ「応用倫理学のすすめ」の3冊です。
現代社会のさまざまな問題が扱われています。
加藤尚武『応用倫理学のすすめ』丸善ライブラリー、602円
T個人の自律の倫理学
「1ヘアヌードと他者危害の原則」「2留学生射殺事件の無罪判決」
「3エイズ患者のプライバシー」
U親と子の世代間倫理
「4子どもの名前と自己決定権」「5何歳になったら親に内証で人工妊娠中絶をしてよいか」
V社会的共同性の倫理学
「6代理母は許されるか」「7安楽死と尊厳死」「8死刑廃止論」
W強者と弱者の倫理学
「9セクハラで大事なのは使用者の責任」「10ハイテク社会と製造物責任法」
「11公正の概念とアファーマティヴ・アクション」「12鯨は食べてよいか」
からなります。
加藤尚武『現代を読み解く倫理学(応用倫理学のすすめU)』丸善ライブラリー、680円
T現在の倫理学
「1いじめと他者危害の原則」「2インフォームド・コンセントと患者の自己決定権」
「3オフレコ破りとTBS問題」「4ワイセツ基準は使えるか」
U宗教の倫理学
「5自由主義の原則と宗教的自己放棄」「6終末論の倫理性」
「7宗教法人法のあり方」「8オウム対策の科学者教育」
V災害の倫理学
「9ボランティアに弱い日本」「10日本的災害観のあやまり」
W環境の倫理学
「11技術と倫理」「12都市は廃棄物になるか」
「13環境ラディカリズムと歴史観念論」
X未来の倫理学
「14遺伝子診断と「無知のヴェール」」
「15国連軍に空爆は許されるか――戦争倫理学の課題」
「16未来の歴史を知ることはできるか」
からなります。
加藤尚武『合意形成とルールの倫理学(応用倫理学のすすめV)』丸善ライブラリー、820円
T生体利用の安全性
「1生命工学の可能性と倫理」「2生命と技術」
U生殖補助医療と幸福追求権
「3国家には「代理母」を禁止する権限がないか」
「4生殖補助医療と規制の方法」「5生殖補助医療の権利問題」
V身体の金銭化とドーピング
「6身体はお金にするといくらになるか」「7生命工学における公私のギャップ」
「8ドーピングの倫理問題」「9お金はどうして「きたない」のか」
W国際公共財と世代間倫理
「10温暖化問題と今後の国際関係」「11公平で効果的な責任分担」
「12環境倫理とアメリカの石油戦略」「13京都議定書の倫理的意味」
「14世代間倫理」
X正義と合意形成
「15環境と情報の時代」「16二十世紀の正義論」
「17権利と合意形成」「18完全義務と不完全義務」
Y刑罰の根拠
「19大蔵省の汚職事件」「20刑罰はこれでよいか」「21精神障害者の刑事責任」
からなります。
続いて、同じく加藤尚武氏の本です。
加藤尚武『先端技術と人間』NHKライブラリー、830円
応用倫理学で最も注目を集める3分野、
「1生命の倫理」「2情報の倫理」「3環境の倫理」について、
それぞれ4つの話から構成されています。
日本初の応用倫理シリーズが刊行中です。(未完結)
監修は加藤尚武氏と立花隆氏。
1巻から順にタイトルを記しておきます。
現代社会の倫理を考える・丸善・予価1900円
1看護の倫理学
2生命と医療の倫理学
3ビジネスの倫理学
4公共政策の倫理学
5職業の倫理学
6科学の倫理学
7教育の倫理学
8経済の倫理学
9マスコミの倫理学
10現代人の倫理学
11環境の倫理学
12性の倫理学
13技術の倫理学
14家族の倫理学
15情報の倫理学
16合意形成の倫理学
17宗教の倫理学
4.応用倫理学(その他)
加藤尚武『戦争倫理学』ちくま新書、700円
「戦争にも倫理があるの?!」驚きの声があがりそうですね。
驚かれた方は、ぜひ倫理学を学んでください。
間違いなく、戦争にも倫理があります。
「1戦争に関する正気とは何か」「2戦争の二種類のルール」
「3連続テロに対する報復戦争は正当か」
「4国家という猫には誰も鈴をつけられない」
「5アメリカの良心は「ヒロシマ」に「ノー」と言った」
「6ゲルニカを忘れないで」
「7鉛の兵隊さんはどうして美しい服を着ているのか」
「8カントの「永久平和論」」「9人は共和国のために命を捧げる」
「10戦争をした日本は有罪か」「11不戦条約のパラドックス」
「12「集団的自衛権」は自己矛盾か」「13ガンマンの正義」
「14日本国憲法九条の問題点」「15平和は消極的な状態か」
からなります。
同じく戦争倫理に関わる本です。
小林正弥『非戦の哲学』ちくま新書、740円
「1黙示編」「2文明編」「3反戦編」「4平和編」「5非攻編」「6非盟編」
「7運動編」「8和戦編」「9希望編」からなります。
また
佐藤康邦・溝口宏平編『モラル・アポリア』ナナニシヤ出版、2200円
の「14戦争はどこまで悪か」も、戦争倫理と深く関係します。
亀山純生『うその倫理学』大月書店、2300円
我々にとって、もっとも身近な倫理問題はおそらく「うそ」でしょう。
その「うそ」をテーマにしたユニークな本です。
[1ウソとは何か」「2人はなぜ嘘をつくか」「3嘘はなぜ悪いとされるのか」
「4「嘘はなぜ悪いか」をどう考えるか」「5嘘はなぜ悪いのか」
「終章:倫理学は嘘つき学なのだろうか」からなります。
加藤尚武『子育ての倫理学−少年犯罪の深層から考える−』丸善ライブラリー、760円
「子育て」も倫理学の対象になるのです。
倫理学の広さを思い知らされる本です。
各章には、具体的なタイトルがついていますが、
敢えて、副題の方を挙げておきます。
「1自己危害防止の倫理学」「2感情的ふれあいの倫理学」
「3エロティシズムの倫理学」「4非行防止の倫理学」「5応答性の倫理学」
「6対決の倫理学」「7後天的先天性の倫理学」「8「ダメ」と言わない倫理学」
「9家庭で育てる倫理学」「10父性の倫理学」「11厚生の倫理学」
「12権利の倫理学」からなります。
加藤尚武『現代倫理学入門』講談社学術文庫、760円
一般的な倫理学の入門書としてもお勧めです。
倫理学の基本を押さえた上で、
現代社会の倫理について解説しています。
「1人を助けるために嘘をつくことは許されるか」
「2十人の命を救うために一人の人を殺すことは許されるか」
「3十人のエイズ患者に対して特効薬が一人分しかない時、誰に渡すか」
「4エゴイズムに基づく行為はすべて道徳に反するか」
「5どうすれば幸福の計算ができるか」「6判断能力の判断は誰がするのか」
「7<‥‥である>から<‥‥べきである>を導き出すことはできないのか」
「8正義の原理は純粋な形式で決まるのか」
「9思いやりだけで道徳の原則ができるか」
「10正直者が損をすることはどうしたら防げるか」
「11他人に迷惑をかけなければ何をしてもよいか」
「12貧しい人を助けるのは豊かな人の義務であるか」
「13現在の人間には未来の人間に対する義務があるか」
「14正義は時代によって変わるか」「15科学の発展に限界を定めることはできるか」
からなります。章のタイトルを見ただけで、
この本の面白さが伝わってきそうですね。
加藤尚武『倫理学で歴史を読む』清流出版社、1456円
副題に「21世紀が人類に問いかけるもの」とあります。
「1歴史の未来を予見することができるか」「2自由主義の時代――その光と影」
「3自由主義からの転換――生命の倫理と環境の倫理」
「4未来社会の設計図」からなります。
加藤尚武編著『倫理力を鍛える』小学館、1417円
ちょっと変わったタイトルの本ですが、
まさにタイトルどおり、「倫理力」を鍛えることを目的にした本です。
では倫理力とは?
倫理的に考える力を指しているようですね。
「1“良識”の力を取り戻す基本キーワード・ドリル」
「2現代の大激論テーマに斬り込む 倫理力強化ドリル」
「3オピニオンリーダーをめざす倫理力応用ドリル」
からなります。
扱われているテーマは、それはそれは幅広いものです。
5.(伝統的な)倫理学
二千数百年にわたる歴史のある倫理学ですから、
伝統的な倫理学に関わる本は、ほとんど無限です。
そんな中から、一般の方でもがんばれば読めそうな本で、
比較的基本的な問題を扱っている本を選んだつもりです。
笹澤豊『小説・倫理学講義』講談社現代新書、660円
小説を読みながら、倫理学が学べてしまうという、
意外というか不思議な本です。
「1理性は感情を制御できるか」「2不倫はいかにして可能か」
「3人を裁く論理」「4民主的とはどういうことか」
「5人の権利の成り立ちについて」
「6失われ、戻らないものたちのために」からなります。
佐藤康邦・溝口宏平編『モラル・アポリア』ナナニシヤ出版、2200円
倫理の根本問題ともいえる、諸問題についての論稿を、
ずらりと並べた本です。
倫理学にかなり興味をもった人にとっては、
たまらなく面白いテーマでしょう。
T道徳の存在のアポリア
「1道徳はほんとうにあるのか」「2道徳の源泉はどこにあるのか」
「3道徳的知の獲得にとって道徳的生活は前提条件となるか」
「4道徳は、効率をめざすべきか、構成をめざすべきか」
「5道徳規範は世知と合致するのか」
U自由のアポリア
「6自由は本当にあるのか」「7自由と平等は両立するのか」
「8自分の身体を自由にできるのか」「9人間は自由であることに耐えられるか」
V社会のアポリア
「10無条件な寛容はありうるのか」「11法と道徳は一致すべきか」
「12営利行為は悪か」「13個人の責任か、それとも団体の責任か」
「14戦争はどこまで悪か」「15種の保存か、それとも人間の暮らしか」
「16男性と女性の差異は差別か」
Wよく生きることのアポリア
「17生命はどのような場合にも尊重されるべきか」
「18道徳的行為は報われるのか」「19人生に究極の意義はあるのか」
「20信仰は市民生活を超えられるのか」「21快楽を求めることは悪か」
からなります。
有福孝岳編『エチカとは何か』ナカニシヤ出版、2400円
第1部は「倫理学の歴史」で、
西洋の倫理思想史を5つの章に分けてたどっていきます。
第2部は「倫理学の課題」で、倫理学の基本的な問題を
12章に分けて考察しています。
和辻哲郎『人間の学としての倫理学』岩波全書、1600円
日本における倫理学の大家中の大家、
和辻哲郎の本です。
「人間の学としての」という所がミソです。
構成は極めて明解。「1人間の学としての倫理学の意義」
「2人間の学としての倫理学の方法」からなります。