2023年度認定「特定プロジェクト研究」


1. 研究課題名・研究代表者名 

(1) AIを用いた予測・分類システムの開発(継続)               
            研究代表者:環境情報学部教授 片山 清和   

(2) 地域を拓く未来企業に関する研究(継続)
             研究代表者:総合政策学部教授 岡 良浩

(3) 地域農業遺産「マンボ」とコウモリを通じて構築する
  環境配慮型農業モデル (新規)    
            研究代表者:環境情報学部教授 廣住 豊一
            (四日市大学地域農業研究所 所長)

2. 研究の概要

研究課題名 AIを用いた予測・分類システムの開発
解決しようとする地域課題 スーパーの食品ロス低減、英虞湾の水質予測、外来生物駆除
研究代表者(◎)、研究分担者 ◎環境情報学部 片山清和  
 環境情報学部 千葉賢、前川督雄
研究概要

スーパーの食品ロス低減
AIを用いて過去の売上量だけでなく、気温や天気など多くの情報から予測する手法を研究することにより、食品ロスの低減を可能とする。この研究は地元スーパーである、スーパーサンシ大矢知店の協力を得ており、データの提供を受けている。

英虞湾の水質予測
水質予測に用いる深層学習システムの幅広い研究を進め、その成果を委託研究事業にも生かしてゆく。

外来生物駆除
外来生物の分布マップのための判定アプリの研究・開発を行っている。これはアプリからカメラを起動し、撮影した画像が外来生物かどうか、どのような外来生物であるかを判別し、外来生物であれば撮影地点を共有型マップにプロットするものである。現在、判定精度向上のためにAIによる判定法を研究している。

SDGsとの関係
本研究はSDGsの目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、目標12「つくる責任 つかう責任」、目標14「海の豊かさを守ろう」、目標15「陸の豊かさも守ろう」に関わり、食品ロス削減、水質改善、外来生物駆除を目指す。

 

研究課題名 地域を拓く未来企業に関する研究
解決しようとする地域課題

経営環境の変化に対応した魅力的な地域産業の発掘・創生

研究代表者(◎)、研究分担者 ◎総合政策学部 岡良浩   
 総合政策学部 岩崎祐子、川崎綾子
研究概要

現在、コロナ禍のなかで、地域企業は経営環境の変化に直面している。他方で、四日市地域は、従来のコンビナート・半導体産業・自動車産業といった産業集積では捉えられない多様な中小企業もみられつつある。四日市を中心とする産業集積については、これまで単発的・個別企業を扱う出版物は存在するものの、網羅的な出版物は見当たらない。
そこで本研究では、コロナ禍での経営環境変化を調査するとともに、地域を拓く未来企業を発掘し、何らかのかたちで公表することを目的とする。
そのため地域産業研究会(仮称)を組成し、助言・協力をうけながら、1年目にリストアップとヒアリングの実施、2年目はアンケート調査とヒアリングの実施、3年目はシンポジウムの実施ととりまとめを行う。


SDGsとの関係
地域企業の創生は、目標8「働きがいも経済成長も」、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に直接的に寄与するものである。また産業の創成を通じて、目標11「住み続けられるまちづくりを」にも貢献できると考えられる。

 

研究課題名 地域農業遺産「マンボ」とコウモリを通じて構築する環境配慮型農業モデル
解決しようとする地域課題

減肥による環境負荷の低減および農業経営コスト削減を進めるともに、地域の貴重な農業遺産である「マンボ」の保全に役立てる。

研究代表者(◎)、研究分担者

◎環境情報学部 廣住豊一
  環境情報学部 大八木麻希、野呂達哉、片山清和、足立明信、黒田淳哉

研究概要

三重県北勢地域には、わが国でも希少な農業用横穴式井戸である「マンボ」が数多く存在する。マンボは、その起源を江戸時代まで遡ることができる伝統的な農業施設でありながら、現代まで活用されつづけており、地域の暮らしに根差した生きた農業遺産である。一方で、その数は年々減少しており、保全が急務となっている。
マンボは人間の生活だけでなく地域の自然とも密接な関係がある。近年では開発により洞窟を追われたコウモリが新たなねぐらとしてマンボを利用している例も報告されている。群れで生活するコウモリは、大きな集団になると、その排泄物も膨大になる。農業用水を供給するマンボにおいては、コウモリの排泄物に由来する有機物類が天然の肥料として機能していることも考えられる。
農業分野においては、世界的な潮流として、大量の化学肥料を投入する高負荷型の栽培体系から、投入する肥料を減らすことで経営コストを下げるとともに環境への負荷を減らす環境配慮型の栽培体系へとシフトしつつある。コウモリの生態を活用することで環境配慮型農業に貢献できる可能性がある。
農業用井戸であるマンボは、集水域の地下水からの影響を受けるとともに、配水域の農業用水の品質にも影響を与える。マンボの水質を継続的に観測することで、農地からの過剰な肥料流出を防止し、農業による環境負荷の低減につなげることができる。
本特定プロジェクト研究では、地域の貴重な農業遺産であるマンボと、そこに棲息するコウモリに着目し、これらが周辺の農業用水や地下水の品質に与える影響を調査することで、環境負荷を減らした環境配慮型農業モデルの提言を目指す。さらに、本特定プロジェクト研究を通じて、マンボの役割と価値を改めて見直し、貴重な地域遺産であるマンボの保全につなげていきたい。
@ 北勢地域におけるマンボの現状把握 文献および現地での調査によって、北勢地域(藤原・大安・菰野・四日市)におけるマンボの分布、現在の活用状況およびこれまでの活用状況の変遷を把握する。とくに農業への利用状況について、各地域の農業水利組合および農業者に聞き取り調査を行い、現状を把握する。
A マンボに棲息するコウモリの生態調査 自然洞窟に棲息するコウモリの生態については、これまでに数多くの調査がなされてきた。しかし、人工建造物であるマンボにおける調査は行われていない。そこで、現地踏査およびAIによる鳴き声(超音波)の解析を行い、マンボに棲息するコウモリの生態について明らかにする。あわせて周囲の光環境を調査し、開発による光環境の変化がコウモリに与える影響についても調べる。
B マンボおよび周辺農業用水の水質調査 マンボおよび周辺農業用水の調査では、地下水位および流量等に加えて、主要な肥料成分である窒素を中心に、リンおよび炭素について調査し、富栄養化に対する寄与評価を行う。あわせて、周辺水域の農地を調査し、土地利用の状況と地下水の水質の関係について調べる。これらの調査を通じて、環境負荷を低減した環境保全型農業モデルの提言を目指す。

 

 

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